(固定)久保さんは僕を許さない・ポエムデータベース(インデックス&第1話~第20話)
雪森寧々先生の漫画「久保さんは
毎回とても楽しみなのですが(電子書籍の)単行本ではなぜか未収録…….。なので、SSの参考も兼ね、一覧化に着手しました。何かのお役に立てれば。
※20話でひとまとまりにします。内容および話数は、スマホアプリ「ジャンプ+」掲載のものです。なお、原典はほぼ縦書きです。
※誤りがありましたら遠慮会釈なくご指摘ください。
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【episode.001】ヒロイン女子とモブ男子
(扉絵)
誰もが君を見過ごしていても。
私だけは君を見つける。
「特別になれない君」が、
私の一番の「特別」だから――。
(結び)
イタズラなのか、気紛れなのか、ともかく君は心臓に悪い。
【episode.002】ご機嫌斜めと膝の上
(扉絵)
おぼえていますか?
その感情にまだ“恋”と、
名が付く前のざわめきを。
(結び)
【episode.003】回答権とお節介
(扉絵)
ガラスが液体であることを忘れがちな僕らは、
二人の時間にうっかりと永遠を誓ってしまう。
(結び)
おじいちゃん先生めっちゃ可愛い。
【episode.004】ポケットティッシュとセルフィ―
(扉絵)
少しだけ、背伸びをしてみた。
猫背の君と同じスピードで落ちる夕日を見たかったから。
(結び)
感情はいつでも、少しだけ遠回り。
【episode.005】ポニーテールと制汗シート
(扉絵)
君を変える強さも、
私が変わる勇気も
無いから今は、知らないふりをする。
(結び)
漏れた
【episode.006】自動扉と通学路
(扉絵)
悲しい言葉はぜんぶ、
前世の恋に置いてきたから。
(結び)
情報ゲット♡
【episode.007】ハードラックと自宅訪問
(扉絵)
君の名前は、
世界で一番短い私のテーマソング。
(結び)
モブとは言っても、
思春期ですから…。
【episode.008】朝支度と何もない日
(扉絵)
一人でいるのが好きな理由は、
不安な夜に、誰かを思い出したいから。
(結び)
その目覚めは、まだもう少し。
【episode.009】雪とホットココア
(扉絵)
季節限定の魔法。
「寒いから、そばにいて」と、メッセージが降り注ぐ。
(結び)
冬が始まるよ♡
【episode.010】本屋と胸元
(扉絵)
世界の中心から、片隅へ。
いつでも私の座標を無視して、感情は一直線に駆けていく。
(結び)
地雷、踏んだかもよーー…?
【episode.011】ゆく年とテレビ電話
(扉絵)
いつか追いつけなくなると知っているから、
僕らは時の流れにひとつひとつ、
丁寧にセーブポイントを作る。
(結び)
―なし―
【episode.012】靴下と違和感
(扉絵)
私の中の欠片たちを、二人称の線で結んで、
君の名前を勝手に使って、新しい星座を作る。
(結び)
気づいても、気づかなくても、多分こうなる。
【episode.013】赤いハートと送り主
(扉絵)
360日は、現状維持を願ってる。
たまに今日とは違う明日が欲しくなって、
ささやかな抵抗を試みる。
(結び)
秘する花。花言葉は「あまのじゃく」
【episode.014】料理音痴とバレンタイン・イブ
(扉絵)
「隠し味は愛情」なんて、簡単に言わないで。
それは一番調理の難しい、キラーアイテムなんだから。
(結び)
こんなことが、あったのでした。
【episode.015】ガールズトークと独占欲
(扉絵)
問いの数も、解答欄の長さも、
見当はつかないけれど。
胸を締め付けるこの難問に、
私は立ち向かう。
(結び)
色めいて、膨らみゆく、
【episode.016】初体験と抹茶ラテ
(扉絵)
私のことを強いと思っている君には、
絶対に教えてあげない、無防備な背中。
(結び)
白石くん、普通に勿体ないぞ。
【episode.017】早起きとイヤホンジャック
(扉絵)
君のために新調したノートは真っ白のまま。
書き殴りたいものは、言葉にできないことばかり。
(結び)
それでね、知れば知るほど
もっと知りたくなるんだよ。
【episode.018】ホワイトデーと感情の宛先
(扉絵)
ガラスの向こうの食品サンプルみたいな、無色透明な憧れだった“青春”を、
ひとかけらだけ口にして、まだ噛み締める余裕はなくて。
(結び)
ホワイトデーのマドレーヌ。
意味は「もっと仲良くなりたい」。
【episode.019】DNAとあこがれ
(扉絵)
身長163㎝、体重はたぶん55kgくらい。
私の神様は意外と、頼りない見た目をしている。
(結び)
誠太(白石弟)と共に、波乱を
呼びそうな子…。今後も注目です。
【episode.20】眼鏡とテスト勉強
(扉絵)
クリスタルレンズの向こう側。
君はいつもより綺麗に見えて、
だけどいつもより小さく見えて、
その距離をゼロにする方程式を、私はまだ知らない。
(結び)
フラグって容赦なく回収されるんですね…。
文乃、最後の花火だよ(ぼくたちは勉強ができない・文乃SS)
「文乃、最後の花火だよ」
恋人の声が、ひとつのイベントの終わりを知らせる。
ただそれだけなのに。
わたしは不意に怯えて、成幸くんの腕を抱きしめた。
薄い胸に押し当て、その腕にすがるように、抱きしめた。
――わたしはずっと、「最後」という言葉が怖かった。
口にすれば「最期」と同じ、その響きのせいかもしれない。
そんな、最後という言葉への怖さを、なくしてくれたのは成幸くん。
お母さんからのメッセージが隠されていたパソコンのフォルダ。それを開く最後のチャンス。そのためのパスワードに至るきっかけをくれたひと。
わたしとりっちゃんの、最後の教育係さん。
そんな優しい成幸くんと、受験が終わったら会えなくなるのが、怖くて。
受験の間に負った怪我が治っても、今日が最後、今日で最後と、真実を告げることから逃げ続けていたわたしを。
うるかちゃんに先んじられて、泣きながら、彼を困らせるだけの告白をした、わたしとの関係を。
最後にしなかった、成幸くん。
あの夏祭りの日、最後の電車を乗り逃し、旅館で一緒の星空を見上げてから、どれだけの月日が経っただろう。
こうして一緒に夜のイベントに出かけるのも当たり前になって。
さっきまでは「今度はあっちに見に行こう!」とか「あれも食べよっ!」って散々振り回していたのに。
金木犀の香りのする、冷たい秋の夜風に吹かれたせいか、ふっとわたしの頭に、問いがよぎる。
――わたしの最後の誕生日って、いつだろう。
来年まで生きることを諦めない限り、そんなこと分かる人なんているわけない、なんだけど。
この幸せな時間は、いつまで続くのか、いつか最後になってしまうのか、その最後っていつなのか。何かが取り憑いたように、「最後」への怖れが、わたしの中を駆け巡る。
なのに。
成幸くんは、少しも訝しがらず、空いているもう片方の手で、わたしの髪を梳いた。
よしよしと子どもを撫でるようでもあり、ベッドの上で愛をささやくようでもあり。
「綺麗だよな、花火」
真っ黒な壁のようになった人だかりの上で、空一面に広がる光の粒が。
成幸くんの顔を眩く照らす。
たぶん、わたしの頬も。
瞬間、懐かしい記憶が、わたしの不安を溶かしてゆく。
「――寒いか?」
「ううん」
「そっか」
「……でも」
「でも?」
「最後に、何かあったかいの飲んで帰りたい、かも」
「最後じゃなくていいぞ。何なら、もっと食べたって」
「女の子の機嫌取りに、食べ物ばっか持ち出すんじゃねぇ、だよっ」
わたしは、油断して近づいていた彼の唇に口づける。
ほら。
文化祭の最後を知らせるための、後夜祭の花火。その一発目が上がったとき、触れあっていた男女が、カップルとして始まるように。
いつだって成幸くんは、わたしの「最後」を、「始まり」に変えていく。
___
※今年も誕生日おめでとう、文乃っち。
(ネタバレあり)WJ26号「シド・クラフトの最終推理」について(殴り書き)
前略、以前*1スフレ二重人格説をとなえた方は的中おめでとうございます。
以下、今週のスフレっぴの最後のセリフ「お前はウソをついている」に対する予想の箇条書き。外して、かつ運命が変わらなかった場合(スフレ=凶悪犯ゼロ・クラフトが確定した場合)、このまま二次創作小説のプロットになります。
・あくまでスフレ=幼馴染みの女の子=ゼロクラフトとする場合、ゼロ・クラフトに「させられた」けど「手は汚していない」だと思う。
・そもそもスフレの中に元々凶悪なゼロ・クラフト人格があった場合、作中の言動から、エクス・クラフトに「従う」とは到底思えない。今の状況はどう見てもエクス>ゼロ。
・また、元々だろうと、後天的にだろうと、ゼロ・クラフト人格がいた場合、スフレを「すべては愛のために」という合言葉で気絶させる必要なんてないよね。ゼロの人格にして、一緒にシドを嘲笑って歩き去っていけばいいんだから。
・だから、確固たるゼロ・クラフト人格が存在するとは思えない。
・じゃあシドが血を流しているあのシーンは? 「金田一少年の殺人」と同じ状況、という譬えが現代でどこまで通じるか分からないけど、記憶にない状態を利用され、やった覚えのない犯行をなすりつけられているのでは。
・あるいは、スフレが催眠のせいで自分自身にナイフを突き刺そうとしたのをシドが体で止めたのでは?
・改めてスフレ=ゼロとした場合。ぜんぜん話題に出てこないシザーレッグ事件が疑問。ゼロ人格が無い前提だと、スフレを洗脳し、さらにそのスフレがあのお父さんをシザーレッグに洗脳したことになる。ならその洗脳のプロが直接シザーレッグを作った方が早いし、成功率も高い。
・より疑問なのはエルフィ号事件。あの事件は、爆弾の調達やら複数の実行犯の船内投入やら、相当事前に組み立てなければいけない。実行犯のリクルートのために脅迫事件も起こしているし、組織を作らないと到底無理。
・つまり、今回見たような、まだら呆けみたいなスフレ=ゼロ・クラフトでは、あの絵図は描けない。要は、これまでの事件の主犯はゼロの右腕と名乗ったエクス・クラフト=トビーだよね、ゼロではなく。
・仮にトビーがスフレを洗脳し、人質を取る役を任せたとする。船内にスフレが現れたら、脅されている爆弾犯は大パニックを起こすよね。
・だから伝書鳩、つまりお手紙をシドに渡す簡単なお仕事だけさせられたのでは。だからスフレが気に病むような犯行は一度もしていない(はず)
・最後の爆弾の設置犯も「なんだかよく分からないけどスフレ警部に『私を縛り上げて爆弾置け』と言われた」と説明したのであって、「私はゼロ・クラフトだ、協力しろ」とは言われていない(はず)
・脱線するけど、そもそも↑コイツの証言まるで信用ならない。エルフィ号事件以前の警部服も、エルフィ号船内でのドレスも、スフレの服の胸元にリボンはついていない! その後スフレと会っている描写はないし、「金髪で胸元にリボンつけた警部」に爆弾の設置を依頼されたって言い方は前後関係がおかしいぞ? 人違いを避ける意味でも、シドに向かって話すなら「あの時あんたと一緒に船に乗っていた女に頼まれたんだよ」って言うはず(Xに切り抜き画像を貼った理由がこれ)
・だから結論。変な言い方になるけど、ゼロ・クラフトという人物は「実在しない」。いるのはエクス・クラフト=トビーという催眠術師だけ。スフレをたびたび前後不覚にし、「ゼロ・クラフト」という人格がいるように思わせているだけ……。
・いずれにせよ残る疑問として、いつからスフレは洗脳されてた? エルフィ号事件の直前から? もっと前から?
・シドの怪我はどうなる? ハクアちゃんが機械で助けてくれるのか? ミザリーの出番はあるかな。
===
以下は、別解と言う名のかなりの妄想。SS書きがどんな風に思考してるかプロットを見るつもりでご覧ください↓
===
・スフレ・フランベリ=幼馴染みの女の子「ではない」と考えてしまった。
・例えばーー将来、名探偵になろうと約束した女の子は、両親と共に強盗事件に遭い、本当はもうこの世にはいない、とかね。血涙が流れますが、以下の通りこれだと理屈も通り、かつ綺麗かなと。「鍵っ子」としては思う。
・シドはそのショックを隠すために「彼女は引っ越した」という偽の記憶を作ったor埋め込まれた。→記憶が曖昧なのはそれが理由。
・トビーが売人になるほど道を踏み外したのもこの(恋していた子が亡くなった)ショックのせい?
・この事件発生にクラフト一家が絡んでいた(名探偵の宿命)とすると、シドを恨む理由にもなっている?→トビーのセリフ「かつてお前に全ての愛を引き裂かれた」とも一致。一連の犯行の動機が分かる。
・当時のトビーの年齢的に「スフレに振られたから腹いせに一家殺害」はなさそうだし。
・現スフレは、シドとの思い出がある「スフレ・フランベリ」と思いこまされた、全くの赤の他人→シドのセリフ「名前を偽っても本当の姿は偽れない」とも一致。
・現スフレの記憶はトビー経由で仕込まれたのだろう。
・そういう洗脳するなら、家族や知り合いがいない人間が都合が良い。例えば孤児とか。
・ルル行きつけの孤児院を狙ったのは警察の情報網を使ったのかもだけど、孤児と先生を逃さず全員連れだせたって事で、相手を信用させられる存在ーーあの孤児院出身である孤児なのかも、という連想も。
・トビーが言う「あの時のように」の「あの時」が「3人で犬で遊んでいた時」だといつから錯覚していた?
・じゃあトビー、なんで洗脳した子と結婚しようとしてるの?→それほどスフレ好きだったんだよきっと! 生き写しみたいな姿の子を見つけたらスフレのコピー作りたくなるぐらいに!(超無理筋)
・事件への関与については、1と同様なので略。
ゼロ・クラフトの正体は?(シド・クラフトの最終推理・20250129時点での予想)
※長い文章がイヤ!な方は、目次から「3.じゃあ、誰なんだ犯人は!?」までジャンプしてくださいませ。
はじめに
ゼロ・クラフトは何者か、という話題を見ました。
おそらくこれから新キャラとして出てくるんだと思いますけど、男じゃないかなぁ……と思います。
結果的に死者が出なかった今回の爆弾事件より、実際に何人も亡くなっているシザー事件の黒幕だとすると、ヒロインとして出てくるのは受け入れにくいですよね。
……という気でいたら、どこからかゼロ・クラフト=スフレ二重人格説が流れてくるではありませんか!?
スフレ好きとしては、この説は何としても否定したい!(笑)
二重人格だったら何でもアリじゃんとは思いつつ、以下「犯人はこれまでの登場キャラの中にいる」という条件の下で考えた、ちょっと天邪鬼な推理、いや妄言を披露します。
1.犯人像
私が思う犯人は、
1)名探偵シド・クラフトの事をなーんでも知っている昔からのファンで
2)彼ならギリ解ける謎を作ることができる知性があり
3)第3話の詐欺師の事件でも油断してたとは言え、警察官であるスフレに気づかれず近づき、眠らせ、拘束することができる道具と能力を持ち
4)何より、シドならあの状況で必ずスフレを探しに船に戻ると確信している
以上を全部満たす人物です。
2.他の人物の可能性を除外
では、犯人候補を除外していきます。
(1)スフレ・フランベリ
最初に言っておきます……長くなりますよ?(笑)
まず、スフレ二重人格説は、以下の理由で難があると思いました。
1)「シドの事を何でも知っている昔からのファン」が当てはまらない。
スフレは、幼い日の約束を大事にしている点で「シドの昔からのファン」とも言えなくはないです。
でも、第一話で、何度も推理で負けてるシドに「警察を出し抜いてさぞ気分がいいだろうな」と言っていること。そして、事件嫌い・恋愛小説好きであることを知らないこと等から「何でも知っている」とは言えない気がします。
もちろん毒親のように「私はあの子のことなら何でも知っているんだーっ(実は知らない)」という可能性もありますが……では、次の理由はどうでしょう。
2)ここまで危ない橋を渡る必要がある?
二重人格を仮にスフレ/闇スフレ(=ゼロ・クラフト)としましょう。
今回、闇スフレは初めてシド本人に名乗りを上げました。そして言いました。これからもこんな事件を届けるよ、と。
……なら死にたくないですよね? あんなに自分の身を危機に晒して宣言する必要があるんでしょうか?
シドへの酸素吸入はスフレの意思でやったことだとしましょう。それで窒息状態になってから、鎖をほどき、船室を通って、船外に脱出する……船がいつどう沈むかわからない状態でそれを実行するの、闇スフレにとってはあまりにもリスクが高すぎませんか? 実際、シドにキスした後の場面、絵柄だけみたら結構死にかけてますよね?
しかも万一、そばにいる人を見捨てたくないと言ったシドが「君を一人では逝かせない!」なんて抱きしめて沈んだら巻き添えですよ? その後、まかり間違ってシドだけ生き残ったら「あれ以来、ゼロ・クラフト静かだな~?」になりますよね? あり得ない!
3)人格が切り替わるスイッチが不明
そして作劇上も。闇スフレがいるなら、何かの拍子に彼女に切り替わるスイッチがあるはずですけど、一般的にスイッチになりそうなものが、既にものすごい数押されまくっているんですよね。ざっと挙げるだけでも、
・第3話の詐欺師の時もそうだった「薬で朦朧」
・船に乗り込むことを許可してくれない上司への「怒り」
・夫婦のフリやダンスという慣れないことをする「緊張(≒ストレス)」
・目の前で人が死のうとする(≒トラウマ)
・暴力を振るう(今回は蹴り)
・(爆弾に向けてだけど)発砲
・爆発(≒大きな光や音)
・誰かと二人きり(今回はシド)
・自分の死が迫る
・キス(≒恋愛感情)
これで切り替わらないなら何で切り替わるんだよって思うぐらい……。どうでしょう?
(2)ルル・シャノワール
次。「避難していたボートから甲板まで、神出鬼没に移動でき」「男女二人を抱えて移動できる脊力をもつ」怪盗霧猫のルルも有力候補ですが、クロロホルムにあれだけビビった描写をするあたりでやや疑問です。
ただ、ルル(と一族)を除外する一番の理由は、動機がない。
彼女と一族は怪盗であり、名探偵は排除したい障害物であって、人の愛をめぐって何度もゲームしたい相手ではない。他人の弱みに付け込み犯罪をさせることで、彼女が得られるメリットがないんです。
今回、船に積み込まれている貴重な何かを盗むために、陽動で爆弾事件を起こしたとしたら別ですが、今のとこ、そんな描写はないですよね?
(3)エリオ・エヴリン
エリオ二重人格説をとった場合、スフレよりはシドの事を知っていると言えそうですが、「こっそり乗り込んだ船で」「爆弾犯にとっ捕まって殺されかけている」ので、「人を捕まえ縛りあげ」「誰だかわからない声で録音を仕込む」なんて無理でしょう。そもそも、船からつまみ出されたら終わりですからね。
また、メタ的にも無理があると思います。作中、最初にゼロ・クラフトの名前を聞いた味方が彼女ですが、完全に初耳な反応でした。
もしエリオがゼロなら、後で伏線になるような反応(どこかで聞いたことあるような〜とか、悪寒が走るとか)をしてないと、作劇上変です。
(4)その他の方々
ソフィ許ファンのルーシィさん(第2話)は、名探偵のシド・クラフトの事を昔から知っているとは言い難い。
回想で出てきたかつての犯人たちも同様。てか家庭教師さんなんて「連続殺人犯」なので、他人を操って殺すより自分の手で殺したいでしょうよ(笑)
今回の暗証番号のトリックは、ラブレター兼犯行予告状に書いてあったものなので、犯人もしくはアレを見た者しか作れません……。
3.じゃあ、誰なんだ犯人は!?
もう一度犯人像に戻りますよ。
「シド・クラフトの事をなーんでも知っている昔からのファンで」「彼ならギリ解ける謎を作ることができる知性があり」「スフレを拘束できる道具と能力を持ち」「あの状況で必ずスフレを探しに船に戻ると確信している」人物。
さらに、スフレ・フランベリ警部のこともよく知っている人物。
そして、人の愛というものに、すごく執着があるキャラクターです
そう、シド・クラフトですよ。
4.動機・犯行方法
第1話でダイジェストされた通り、彼が心を寄せた人たちは事件によって離れていきます……両親はそれを「運命だから〜」とマトモに取り合ってくれない。
これまで人生で自分が得られていない「人の愛(家族愛、友愛、そして恋愛)」、時にはそれが理由で事件まで起こしてしまう「人の愛」とは何か知りたい! これが二重人格という歪んだ形で出てしまったのではないでしょうか。
もうひとつ、彼自身が話してくれている中から動機を見ることも出来ます。
いつも回りの目にビクビクしている自分が嫌い。本当は名探偵としてカッコつけたくない。それでもそばにいてくれる人たちは見捨てたくない。
その傍に居てくれる人たちは「名探偵シド」を慕ってきてくれてるわけで……。
難事件を解いている限り、彼女たちは傍にいてくれる。だから、難事件を作ろう。という発想が生まれてもおかしくない。
犯行方法自体は難しくありません。避難誘導をしていたスフレに後ろから近づき、ルルさんから受け取った、エリオを眠らせたクロロホルム付きの布を再利用して眠らせ、手近な部屋に押し込め、縛る。
あとは避難するだけ。シド・クラフトの人格に戻れば、必ずスフレの不在に気づいて戻ってくれる、という寸法です。
録音は「その場でやった」もあり得ますが、蓄音機にくぐもった声で録音しなければならない。咄嗟にやったのではなく、乗船前から予め仕込んでいた可能性も捨てきれません。夫婦という形でなくとも、捜査するならスフレと一緒に乗ることになるのは確実ですし、スフレを眠らせる手段は、別にクロロホルムじゃなくてもいいんですからね。
4-2.スフレ二重人格説との違い
シドは、第3話の詐欺師事件で、スフレが普段シドをどう呼んでいるかだけでなく、スフレの手に「銃たこ」があることも把握しており、それを基にペティ・ジーンを捕まえました。
今回も、エリオの意見を否定する形で、スフレが船に戻って捜索することを確信し、沈む船に戻りました。
ゼロはシドの事もスフレの事もよく分かっていると言いますが、スフレ→シドより、シド→スフレの方が相手の事を分かっている、と言えそうですよね。
また、今回のゼロ・クラフトの仕掛けた爆弾拘束ですが、シドとスフレの状況で、決定的に違う点があります。
シドはスフレの前で、スフレを見捨てて逃げられるんです。
闇スフレ=ゼロだった場合。仮にあの状態からシドを置き去りにして逃げきれたとしても、運よくシドも生き残る可能性があります。そうなれば、後日、おかしな状況を問いただされるのは確実です。
でもシド=ゼロであった時は。スフレを見捨てて逃げた場合、あの状態のスフレに待つのは溺死か爆死で、確実に口封じができます。
なので、ゼロは「シドは9割9分謎を解くだろう」と信じつつ、本当に危機的状態になったら、わが身を守るために逃げられるわけです。
で、傷心のシドに対し、無情にもゼロ・クラフトからの予告は続けられる……ゼロが執着するのは、あくまで「名探偵シド・クラフト」であって、スフレではないですから。
では、私がスフレの項目で挙げた『スイッチ』があったとして、シドがゼロに切り替わるスイッチは何か?
ズバリ「深い愛を見聞きした時」ではないでしょうか。
シザーレッグは「亡くなった娘への愛を語るのを聞いて」、今回の爆弾犯夫婦は「夫婦で思い合う愛を聞いて」。こじつけるなら、ルーシィさんの時も「ソフィ許へ向ける愛を聞いた」ので、人を使って待ち合わせ場所の店を焼いた……。
避難誘導中のスフレも、何かゼロに切り替わるスイッチになるほどの「愛」を見せたのではないでしょうか?
そうすると、今後の展開にも合いそうです。エリオがシド、またはそれ以外(例えば自分の作品『ソフィ許』とか)に対して何らかの「愛」を見せ、ヒロインレースが進みそうになったら……きっとゼロ・クラフトに狙われます。
5.仮に予想通りだった時、この漫画の落としどころ
コナンや金田一少年がよくネタにされていますね。奴が行くところなぜか必ず事件が起きる、と。
だから「名探偵と事件は惹かれ合う」じゃなくて「実は事件は名探偵が作っていた!」 というのはその辺を踏まえた「ネタ」になり得ます。
もしシド・クラフトが犯人になったら、これ以上名探偵として推理はできません。ほら、タイトルの回収ですね。
シドクラフトの「最終推理」と。
さて、これを踏まえてどう話を着地させるか。ゼロ・クラフトは今のところは自らの手を血で汚してませんが、多くの人を不幸にした悪者です。
仮に私が二次創作としてやるなら……流れはこんな感じです。
この推理――シド=ゼロが披露される時には、それを聞いて、ゼロを逮捕する役が必要です。今のところは、スフレ警部しかいませんね。
一方でゼロ・クラフトは人をそそのかすだけで、実行犯は今のところはスフレ殺害未遂以外は*1ぜんぶ赤の他人です。仮にゼロを捕まえたところで、犯罪を犯した証拠がなく、更に二重人格となれば、舞台になっている時代でゼロを公に裁く方法はない。
するとシドは自分で自分を裁くしかありません。シドの格好はシャーロックホームズを意識させますから、もしオマージュするなら……滝に飛び込むとか、ね。
それを目の当たりにしたスフレは「たとえ誰であろうと、私の目の前で死ぬことは許さん」とシドの手を捉えるでしょう。そして……一緒に滝壺へ落ちていく。
そうなれば、ワトソン役の記録係・エリオはこう書き記すでしょう。こうして名探偵シド・クラフト、スフレ警部、そして凶悪犯ゼロ・クラフトは、人々の前から姿を消した……と。
妄想を最後まで。
親しい人を一度に二人も失い、傷心で本業の執筆も滞ったエリオに、ある日手紙が届きます。
差出人のないその手紙は、はるか遠くの国から。中身を読んでエリオは驚き、確信します。
シド・クラフト、ゼロ・クラフトはあの日確かに死んだ。しかし彼は別な名を得て、償いの日々を生きている。その傍らには、ペティから学んだ畑仕事で彼を支えながら、妻として夫を見守るスフレの存在も……。
以上、現在お出しされている情報から話の締め方まで推理しました。対戦、よろしくお願いいたします。
*1:20250130指摘あり訂正、証拠は残してないでしょうが直接手を下してますね……
卓見にただのファンが思った2,3のこと(ある考察への私論)
※お断り※
私はラブコメの専門家でもなければ、美少女ゲーム史の研究者でもないので、以下はあくまでこれらを楽しむ1人のファンとして愚考したところを述べたものです。
- 【要旨】
- 1.きっかけ
- 2.美少女ゲームの過去〜結末がなくても作品は成立するのか〜
- 3.グランドルートの功罪~美少女ゲーム「AIR」を例に~
- 4.ニセコイが遺したもの
- 5.古くて新しい「答え」
- 5の補記.Twitterで見た、マルチエンドに対するネガティブ目な評価に対しての私見
- まとめ
【要旨】
・唯一の「正しい結末」を明示しなくても「作品」というものは成立しうる。
・ニセコイの遺した傷跡がマルチエンドの採用に影響しているのではないか。
・ラブコメ漫画の読者が傷つけあわないよう、解決策に美少女ゲームの構造を持ち込んだが、それが読者の一部にはうまく届かなかったのではないか?
1.きっかけ
私がこの記事を書こうと思い立ったのは、上記のnote記事で「令和のKanon問題」「グランドルート」という単語を見たことです。
ぼく勉を長文でルールブックと評したFの人という方もこのお方も、単一の結末がなければ作品は成立しないというのが認識の前提にあると思われたのですが、かつて美少女ゲームや恋愛シュミレーションゲームの世界にいた住人からすると、それは別に常識ではなく、ヒロインの数だけ物語がありそれらが統合されていなくても「作品」は成立しうると考えています。
そもそも、この「グランドルート」という概念が、かつては存在しなかったのですから。
2.美少女ゲームの過去〜結末がなくても作品は成立するのか〜
美少女ゲームーーいやはっきりとR18のエロゲというべきでしょうねーーは、もともと数値とフラグコントロールだけで出来ているものでした。一定の数値を達成したら、行為に至れる。最終目的はそのシーンを見ることですから。*1
コンシューマでも1994年に登場した恋愛シュミレーションゲーム「ときめきメモリアル」は、美少女ゲームの性的要素の代わりに特定ヒロインとの青春、つまり道中を楽しむことに主軸が置かれていますけれども、数値を上げてフラグを立てる、というゲーム性自体は変わりませんでした。*2
少し時がたち、美少女ゲームの世界ではLeafの「痕」「ToHeart」を代表としたビジュアルノベルが流行りました。ゲームというより、あたかも本を読むように進めてR18シーンも見る世界観です。
そしてtacticsの「ONE」、そのメンバーが立ち上げた会社Keyの出した「Kanon」によって、「ヌく」のではなく「泣かせる」「読ませる」ことが流行るようになりました。そこではいわゆる「実用性」やゲーム性はほぼ消え、プレイヤーは物語を読んで作者が伝えたい「テーマ」を受け取る、まるで小説や漫画のような楽しみ方になりました。
それでも、彼女たちの物語を統合したような、漫画でいう最終回にあたる「グランドルート」という概念はまだありませんでした。
では、冒頭のnoteの書き手、そして引用されたFの人がいうように、これら「学園もの」と称された、単一の正解がない物語群は「ただのルールブック」なのでしょうか?
私はNoだと思います。
例えばONEは「えいえんのせかい」という概念が存在するある世界での群像劇。
Kanonはシナリオは違えど「思い出に還る物語」として、5人6人*3のヒロインのシナリオが一つのテーマに対する物語になっている。いずれも作品として存立しています。
単一の結末がなくても、作品はひとつの物語として存在しうるのです。現代で例えるなら、アイドルマスターで、誰かひとりのアイドルだけがメインヒロインと扱われる状況を想像したら、唯一絶対な結末を決めることへの違和感が、感覚的にわかるのではないでしょうか。
ですが、これは一つ困った問題も生み出しました。noteの記事にもある、いわゆる「Kanon問題」です。
乱暴に言うと「あるヒロインを選ぶと他のヒロインは救われずに死ぬ。全員幸せにはなれない」。
ある子に萌えたくてもその裏で他の子が不幸になっていると思うと心から喜べない。今でいう箱推し、複数ヒロインが好きだと、非常に嫌な気分になりますよね。
3.グランドルートの功罪~美少女ゲーム「AIR」を例に~
もう少し美少女ゲームの話にお付き合いください。
大きなテーマを伝えたい。だが群像劇だとKanon問題が生じる。これに対し、KeyがKanonの次に出した美少女ゲーム作品「AIR」では、グランドルートが登場します。
この作品を超乱暴に要約すると、主人公が、遥か昔の先祖から託されている使命を果たすため、ある少女を探すお話です。
そしてヒロイン3人のうち1人だけがその因果と直接繋がっており、3人全員を攻略した後の隠しルートも含めて長い長いお話になるのですが、一方で他のヒロインを選ぶと「彼女のために使命を放棄する」「この街に正解があったにもかかわらず、旅を続ける」という結末になります。
さて、この形で生まれた新たな問題は、選んだヒロインによっては物語やテーマ的には誤りになることです。公式からそのヒロインとの恋愛は、本来のテーマから言うとバッテンですよと×を付けられるわけです。
これは、複数の魅力あるヒロインとの時間を楽しむための美少女ゲーム世界との相性が非常に悪い。自分が好きなヒロインが、公式の本音ではバツになり得るわけですからね。
だからこの後のゲームは「全てのヒロインを攻略することがグランドルート、つまり「正解」に至るための必要不可欠な要素だったと位置づけるようになります。*4それでも、そのグランドルートのヒロインが、自分が好きじゃないヒロインであった時には、よほど感動できない限り、作品の満足度が低くなるだろうことは容易に想像できると思います。
以上のような美少女ゲーム、Leaf・Keyの流れを、年齢的にも、ゲームの同人を書いているご経歴からも、筒井先生が知らないとは思えません。往時のLeaf・Keyの知名度を例えるなら、漫画やゲーム好きがTwitter(X)にいて、ウマ娘。やジャンプ + の話題に出会うのと同じぐらいの頻度、といって過言ではないと思いますから。*5
4.ニセコイが遺したもの
さて、次の要素です。漫画「ニセコイ」と、筒井先生がお書きになった公式スピンオフ「マジカルパティシエ小咲ちゃん!!」(以下「マジパテ」。)です。
マジパテは一部の小咲ファンから聖典あるいはこっちが正史と言われるほどの作品。裏を返せば、それほどまでニセコイの遺したヒロインレースの傷跡が深かった、と言えると思います。
ニセコイが現在まで呪いを残し続ける理由は様々ありましょう*6が、作者がメインヒロインである千棘を優遇したと読者に「思われるような」振る舞いをした*7が原因だろう、という解釈をすることにおそらく異論は出ないでしょう。
つまり、作者が誰か一人のヒロインに肩入れしたように見えたら、これほどまでに深く、長期にわたって呪われる事を、筒井先生は漫画家として目の当たりにしているはずです。
一方でマジパテの中。その千棘、ゴリラスーツのような格好で現れます。これは小咲のファンにとっては溜飲を下げるものであったでしょうが、逆に千棘の熱烈なファンから見たらどうでしょう? 自分の好きなヒロインがゴリラの扱いされて、気持ちよく思えるでしょうか?
どの時点でかはわかりませんが、おそらく先生も、どこかの時点では気づいたと思うんです。誰かの嫌いは誰かの好き、であることを。この描き方は、結局は不毛な殴り合いを助長するだけの行為ではないか……ということを。
5.古くて新しい「答え」
だから、筒井先生はラブコメ連載にあたり、もし首尾よく連載が続いたのであれば、すべてのヒロインを公平に扱うことを構想したのだと思います。*8
そしてその手法として、同じテーマの中でヒロインの物語だけが束ねられている、かつての美少女ゲームの構造を、ラブコメ漫画における新しい手法として提示したのではないでしょうか。
ただ、私も書きながら思いますが、この構造は、当時の美少女ゲームの流れを体感していない人には伝わりにくいものだと思います。
なぜならば、いま、買い切り型の「終わりがある」美少女ゲームは、グランドルートという「単一の結末」が前提になっているからです。*9。
そして、昨今のラブコメ漫画は「〇〇さんは〜」「〜な〇〇さん」のようなタイマンラブコメが台頭で主流。主人公とヒロインとその他、が基本構造になっていて、読者は作品の中で好きなヒロインを選ぶのではなく、単一のヒロインと主人公役の男の好感度によって手に取る作品を選び、そして評価する傾向にあると思います。
彼とあの子が結ばれる話なら支持するが、でなければ作品評価はマイナス。前半で触れた「グランドルート=正解に選ばれたヒロインの好き嫌いで作品の評価が変わる」のと近しい構図です。
かつての美少女ゲームのプレイヤーのように、自分の好きなヒロインがいて、作品全部としても好き、という着地点を狙ったけれども、自分が推すヒロインと主人公が結ばれるという「正解」を求める「現代のマンガ読者の一部」、いやむしろ「古典的なヒロインレースの支持者」かには理解されなかった。このボタンの掛け違いが、一部の極端な非難に繋がってるのではないでしょうか?
5の補記.Twitterで見た、マルチエンドに対するネガティブ目な評価に対しての私見
よく「うるかで物語を完結させた後、他のヒロインの物語を書けばよかったのではないか」と見ますが、そうすると「うるか(正史)+その他」という形になる。おそらく文乃と理珠のファンからは「だったらなんでこのふたりを最初に出したんだ、ただの舞台装置か!」となり、よりいっそう激しい呪いを場に残したのではないでしょうか。うるか派が「感動をマルチルートの踏み台にされた」と憤る『Route1/5』という単語は、先生が「ヒロイン全員を公平に扱う」というメッセージを伝えるために、どうしても外せなかった表現なのでは、と私は思います。
また「能動的に選べるゲームでは許せるがマンガでは許せない」という意見を目にしたこともありますが、ゲームで物語を読み進めるためには、製作者の用意した正しい選択肢を選ぶしかないわけで、その「能動的」という行為がどれほど「能動的」なのか、個人的には非常に疑問があると言わざるを得ません。*10
まとめ
まとめますと、私は筒井先生は物語を放棄したのではなく、ましてや打ち切りの常套句をネタ的に用いて、創作者としてとるべき責任を回避したのではなく、かつての美少女ゲームが持っていた唯一の「正しい結末」がなくても作品世界は成立するという概念を、ラブコメ漫画の世界に持ち込み、読者が傷つき傷つけあわなくてよい、新しい形の結末を示そうとしたのだと考えます。
私は、筒井先生が自身が生み出した全てのキャラクターを愛してるがゆえに、このような古くて新しい手法を取ったものだという風に考える次第です。
ただ、残念ながらその手法は、必ずしも万人に理解され受け入れられるものではなかった……とも。
※蛇足※
・この件で「Kanon問題」という単語を持ち出すあたり、あのnoteの筆者はそれなりのご年齢だと思われました。なので「単一の正解カップルがいなくても成立する物語」の喩えに、マガジンの漫画「BOYS BE…」を出しても良いかなと思いましたが、話を複雑にするので止めました。
・個人的には、まるで現代アートについて論争してるような感覚になりました。果たしてこれは芸術と呼べるのかどうか、と、まったくと言っていいほど平行線になるお話を。なので、ある程度極論が出ることも仕方ないかと思いますが、大切なのは作者の人格であったり、あるいはキャラクターへの愛のあるなしまで論ずるのは止めようね、というつまらないありきたりな話で終わってしまうのがとてももどかしいところです。
・現在連載中の「シド・クラフトの最終推理」について、ヒロインレースが始まっていると見る向きもありますけど、これを書きながら私は「ぼく勉の時の反応もあったし、もしかしたら先生、最後まで誰とも恋愛的に結びつけないかもな……」と思いました。
*1:だから例えばelfの「同級生」は、深窓の令嬢との好感度を徹底的に上げつつ、最後の最後に夜のお店の嬢に告白し結ばれるという遊びができたわけです(笑)
*2:ヒロインの負の気持ちを制御する、いわゆる「爆弾処理」もゲーム的です。ヒロインとラブラブになるだけなら明らかに邪魔な要素なので
*3:1月27日指摘受け修正。Kanonは佐祐理をさん含めての物語……!
*5:先生のプレイの有無については寡聞にして知りませんが、文乃と月宮あゆとの共通点の多さをはじめ、ぼく勉はラブコメ漫画よりむしろギャルゲーっぽい要素が多いなと個人的には感じます
*6:主人公の楽の振る舞いに共感できないとか
*7:人気投票等
*8:そこにあすみと真冬が入ってきたのは想定外だったかもしれませんが
*9:Keyの現時点の最新作「Summer Pockets」も、あるヒロインと結ばれることが「正解」の一本道になる
*10:むしろぼく勉の場合、各ヒロインのルートが完全に分かれているから読みたくないヒロインの話は「能動的に」避けることもできるわけで、よほど趣旨に合う
わたしがてんびん座だったとき(ぼくたちは勉強ができない・文乃SS)
「おかあさん、おたんじょうびおめでとう!」
「おめでとう!」
おかあさん、と呼ばれたわたしの前には、生クリームと苺で飾られた、絵文字のようなバースデーケーキ。その真ん中に置かれたプレートには、ハッピーバースデーふみのちゃん、と子どもでも読めるように書かれた、チョコレートのメッセージが乗っている。
拍手を受けながらわたしは、ケーキの上で揺らめく、5本のろうそくの火を一気に吹き消す。
すぼめた口を戻し、ありがとう! とわたしが感謝の言葉を伝えようとしたその時、幼い声の方が先に飛んできた。
「おかあさん、なんさいになったの?」
もちろん答えは決まってる。
「ひ・み・つ!」
「えーっ! おしえて!」
ごめんね。でもね。
「だって教えたら、すぐ年長のお友だちとか、先生に言っちゃうでしょ?」
「いわないからおしえて!!」
「ふふ、5さい、だよ!」
「そんなわけないでしょ!」
ほっぺたを膨らませ、おませに反論してきた我が子に、自信満々に言い返す。
「だって、お母さんになってからは5歳だもん、間違ってないよ! ろうそくだって5本だったでしょ?」
「じゃあなにどし?」
「ふふ、お父さんと同い年、だよ!」
「じゃあおとうさんは」
「ん? お父さんはうぐッ!?」
そのまま素で言いそうになった成幸くんのみぞおちに、子どもからは見えない速度で手刀を叩き込む。
「(話聞いてた? 成幸くんが言ったらもれなくわたしの齢もモロバレなんだよこの野郎)」
「(こ、子供の前では穏便にお願いします文乃さん……)」
「おとうさん?」
「じゃあ、ケーキ切ってくるねっ!」
子どもの興味を成幸くんから剝がそうと、わたしは立ち上がり、白いお城のように豪華なホールケーキをテーブルから持ち上げる。
狙い通り視線をわたしの方に向けた我が子は、だけどそこから、わたしが予想もしなかったことを口にした。
「じゃあ、なにざ?」
わたしは一瞬固まり――そして、とびっきりの笑顔を浮かべる。
自分の子どもの中に、星座、というものが存在するようになったこと。それがうれしくて、うれしくて。
今日もわたしにプレゼントをありがとう。感謝しながら、わたしは今度こそ我が子に、ちゃんとした答えを返す。
「ふふ、おかあさんはね――
『おとめ座』だよっ!」
*
子どもが寝た後の家の中は、パーティ後のせいか、いつもよりしんとしている気がした。
「(あ。まだりっちゃんにちゃんと返信してなかった。朝はバタバタしててスタンプだけだったし)」
キッチンに足を向けると、静けさに誘い出されたように、親友への連絡のことが頭に浮かんだ。
食洗器が終わったお皿を棚に戻しながら、わたしは、改めて朝にもらった連絡を反芻する。
誕生日おめでとうございます、というメッセージに続けて書かれた「そういえば文乃、スキーはもう来ないのですか? だいぶご無沙汰してますが。今なら子どもも、そり滑りやかまくらで楽しめると思います! 年末ぐらいに泊りがけならそろそろ……」という文面からは、鼻息が顔にかかりそうなぐらいの圧を感じた。
「(一緒にスキーしたいんだよねりっちゃん、どうしよっかな)」
運動はどっちかっていうと苦手だったりっちゃんなのに、スキーだけは、あの卒業旅行以来ずっと継続してて、いまやわたしよりも上手になっていた。
大学生の時はそれこそ毎シーズン、必ず誘われてた気がする。
ネバーギブアップの成果です! とふんすと胸を張ってた姿を思い浮かべると、さっきの我が子とのやり取りが思い出されて、ついわたしは苦笑してしまう。
たぶんりっちゃんなら多分あっさり言っちゃうんだろうなぁ、自分の歳。「子供に嘘を教えるわけにもいきませんし……書類にも書いてますが、何か困ることでも?」とか言っちゃって。
「う~ん……やっぱり文乃はてんびん座だよなぁ」
そんなわたしの物思いは、リビングの方から聞こえてきた成幸くんの唸り声で中断させられた。
さっきまで子どもを寝かしつけてくれたけど、いま何してるんだろう。
「ん? どうしたの?」
「あっ、ごめん独り言だった」
成幸くんの視線は、開いたノートパソコンの画面に向けられていた。わたしが近づいていっても、慌てる様子はない。
座る成幸くんの肩越しに、わたしはその中身を覗き込む。
天秤座のあなたは、12星座の中で一番話術に長けています。お話上手なのです。次々と繰り出す話題と人を飽きさせない巧みな言葉使いで、誰もがあなたの話に夢中になります。友達の何気ない言葉や態度も敏感にキャッチ。そしてそれを楽しい話題にしてしまう、そんな話術を持っています。
また、記憶力がいいあなたは、他の人が忘れた話や昔話も細かく覚えていています。友達はあんぐり口を開けて感心して聞いていることでしょう。また、人の話を聞くことも好きで、その話を膨らませて次の話題に繋げるので、話が途切れることがありません。
天秤座だけあって、話のバランスをとるのが上手なあなた。
口数が少ない人にも話を振ってあげる優しさもあり、白黒をはっきりさせずに話をまとめることも得意なので、人と対立することが少なく誰からも好かれる性格です。要領がよく社交的であり、世渡り上手な人なのです。
反対に、人に嫌われたくないがゆえに本音が言えず、八方美人と言われることも……
「どの辺が?」
ページの下端まで読み切って、わたしは成幸くんに問いかける。
まさか成幸くんに限って「平らだから」とは言わないと思うけど、一応ね、うん。どこが? とは言いませんけど。
「書いてることぜんぶ、文乃に合ってる気がする」
「そう?」
「うん、やっぱり12星座のほうがしっくりくるよ。いまだに慣れないな、13星座って」
そう言った成幸くんが何回かマウスを動かすと、わたしたちの前のディスプレイに、13星座占いの一覧が表示された。
わたしは「科学的には正しいんだけどね」と言いながら、成幸くんの肩を軽く揉む。
そう、わたしたちが出会ったころ当たり前だった黄道12星座は、もはや「懐かしの」の扱い。きっかけはわからないけど、テレビやSNSでもどんどん13の方が優勢になっていき、いつの間にか世の中は、星座といえば13星座、になっていた。
いまやパソコンでも、へびつかい座と打てば、牛の顔みたいなマーク⛎️が変換で出てくる。だから今、わたしの星座の名乗りはてんびん座ではなく、13星座のおとめ座だ。
「科学的っていってもな、そもそも12星座から13星座になったのだって、星座を決めたときのミスなんだろ? 太陽の通り道にかかるようにへびつかい座作っちゃったっていう……」
「ふふ、ミスは言い過ぎだけど、確かにうっかりさんだったかもね。へびつかい座、へび座まで含めたら、全天でも大きい方の星座にしたのにね!」
「当時ならまだ占星術も星座占いより影響あっただろうに、集まった天文学者が誰ひとり気が付かなかったって……冗談みたいだよな」
「もしかしたら、気づいていたけど言えなかった人もいたんじゃないかな。わたしも、天文関係の学会で星座占いの話を始める人がいたら、ちょっと変な人かなとは思うよ」
「ふぅん……って、改めて見たら、さそり座ってこんなに短いのっ!?」
「太陽がさそり座にいる期間は短いからね」
成幸くんがのけぞるのも無理はない。1年間をほぼ平等に分けていた12星座と違って、星座と太陽の位置関係に合わせた13星座はとっても『科学的』だ。長い星座は割り当て期間が1か月を超えるし、新・さそり座の期間は、1週間もない。
「極端……まぁ、さそりって神話だとオリオンを刺してるし、さそり座の女って歌もあるし、イメージ悪いから、期間が短い方がみんな嬉しいかもな」
珍しくけなす口調の成幸くんに向かって、わたしはほうっと息を吐き、いたずらっぽい笑みを浮かべてみせる。
「あまりさそり座を悪く言わないであげてね成幸くん。わたし、その『さそり座の女』かもしれないんだよ?」
「えっ?」
もちろん12星座の方でだけどね、と言いながら、わたしは開かれたノートパソコンに横から腕を伸ばす。
キーボードから『12星座占い』、続けて、カタカナで三文字の言葉を検索窓に入力する。
「考え方はさっきの13星座と一緒。太陽が各星座に入るタイミングは毎年変わるから、星座と星座の境界線の日は、年によって、てんびん座になったり、さそり座になったりするんだよ」
春分の日は、太陽の動きに合わせて毎年決めてるって話、聞いたことない? と付け加えると、成幸くんもそういえば……と頷き返してくれる。
それを見届けて、わたしは検索を実行し、表示結果のひとつを開く。
「だからね、生まれた年によって、10月23日は、てんびん座かさそり座か違うんだよ。もっと言えば、同じの日の中でも、産まれた時間で違うんだ」
「へぇ……」
いま、わたしたちの前には、その区切りの時間が表示されている。
初耳の知識にため息を漏らした成幸くんの耳に、わたしは、となりの星座との境界線は『カスプ』というんだよ、と付け加える。
「で、文乃はどっちなの?」
「それをね、これから確かめようかなって。今までは分からなかったんだけど……これを持つまではね」
そう言って、わたしはリビングの引き出しに手を入れ、自分の胸の前に、子どもの『それ』をかざす。
「母子手帳?」
「うんっ、産まれた時間がはっきり書いているから」
「あっ」
そして、子どもの手帳の後ろから、表紙に茶色のしみがついた、古びた手帳を引っ張り出してみせる。
自分の、母子手帳だ。
かつてのお母さんと同じ、この立場になるまで、この手段を知ることはなかった。
産まれたての写真はアルバムにあっても、正確な出生時間はわからない。けど、こんなことのために根掘り葉掘り人に尋ねるのも、わたしにはためらわれた。
ただ、知った後も……重くなった身体で家中を捜索して見つけたこれを、開く勇気は出なかった。かつてのお父さんと同じぐらい、向き合うのを避けた、と言ってもいいかもしれない。
それは。
愛されていた喜びと同じぐらい、愛した子どもを残して世を去る立場の辛さを、知ってしまうだろうから。
時代を感じる絵柄の表紙を見るたび、お腹の小さな命と自分を、かつての自分と母に重ねて、時々涙した。
そして、実際に子どもが産まれてからは、いまを育てるのに必死で、確かめている余裕なんてなかった。子育ての知識や常識は日々変わってるんです、と言われれば、知識を得るために開くこともなくて。
でも。ここまで子どもが大きくなった今なら、きっと。
何気ない雑談のひとつとして、向き合えるような気がした。
「成幸くんはどっちだと思う?」
「う~ん、やっぱりてんびん座じゃないか?」
「もしさそり座だったとしても、嫌いにならないでね?」
「なりませんなりませんっ、言質取ってもいいから!」
「了解です。それでは……正解を発表します!」
大袈裟な口調で合図をすると、わたしは色の褪せた手帳を開き、産まれた瞬間のわたしの時間と目を合わせる。