SSの本棚

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愛しき今夜(ぼくたちは勉強ができない・文乃SS)

※七夕🎋をテーマにした、台詞だけで構成した小話です。

「お母さんあのね! 宇宙には、ワイン500本のお酒がふきだす星があるんだって!」
「まぁ」
「その星に行ったら、お父さんもお母さんも毎日かんぱーいってできるね!」
「そうね、助かるわね」
「あとねあとね、10万度のお湯がふきだす星とか、小石が雨みたいに降ってくる星とか、あるんだって!」
「まぁ怖い。これだけたくさんのお星様があると、いろんな星があるのね。それで、お願い事は書けた文乃?」
「うん!」
「じゃあ、お母さんのと一緒に笹に吊るして頂戴ね」
「はーい!」


「きょうは晴れたから、ふたりも会えたかなぁ」
「そうね、きっと会えているわね。でないと淋しくて泣いちゃうわね」
「……お母さん?」
「文乃。宇宙ってとっても広いの」
「うん、知ってるよ?」
「地球を、文乃の好きな青いビー玉ぐらいだとするとね。図鑑に出てた海王星って青いお星様は、歩いて40分ぐらいかかったところにある、ピンポン玉みたいな大きさなの」
「ふーん……」
「ここから見ると、お星様は隣同士近くて、沢山集まってるように見えても、実際はぽつんとひとり、淋しいの。だから織姫様と彦星様は、毎日とっても会いたいと思うわ」
「うん」
「だからね文乃、星の綺麗な夜には、きっと見つけて頂戴ね」



「……だからね成幸くん、七夕が晴れると、わたし、すごく嬉しいんだ」
「きょうはお母さんの星も、きっと見てるよ。本当によく晴れたよな」
「織姫のベガと彦星のアルタイルの間は、本当は光の早さで15年の距離。だから毎年会うのは無理だけど、せめてお話の中だけでは、ね」
「そうだな」
「ふたりの間を流れる天の川も、銀河の星の濃い部分。その銀河が、宇宙には観測できるだけでも2000億個以上あるといわれていて、ひとつの銀河に1000億個の星があるすると全部で……」
「うわ、数えるのも嫌になっちゃうな」
「そうだね、だいぶ慣れたけど、計算してたら頭痛くなっちゃう。だけど、そんな星も元を辿ると、たった二つで出来てるんだよ」
「へぇ」
「水素とヘリウム。わたしたちも地球も、宇宙の星も、ぜんぶその二つのぶつかり合いで出来てるんだよ」
「凄いな。まるで、アダムとイブだな」
「ぶふっ!」
「文乃も俺が、もともとは同じものから出来てるんだなぁって思ったら、なんか嬉しいよ」
「も、もう成幸くん……すぐそういう事を平気で言う」
「あ、悪い! なんか俺、またおかしい事言った?」
「うれしいんだけど……とっても、恥ずかしいセリフだったから」
「あ……文乃の顔見てたら、なんか俺も恥ずかしくなってきた。ごめん」
「ううん。だから……そういうのは、ふたりだけのとき限定で、ね」